Cardiokol – 電話音声で心房細動を検出するAI技術

心房細動は脳梗塞リスクを高める不整脈の一種で、世界的には65歳以上高齢者の4人に1人が罹患するという。心房細動には無症候の患者が多いため、限られたスクリーニング機会で見過ごされたまま、脳梗塞をはじめとする重篤な転帰に至る例が後を絶たない。イスラエル発のスタートアップ「Cardiokol」は、電話越しの音声から心房細動を検出するAI技術によって課題の解決を図ろうとする。

Cardiokolのソフトウェアは、1日2回、電話中またはデジタル音声アシスタントとの会話中に、数秒間「あー」と発したユーザーの声を解析し、心房細動の疑い患者にフラグを立てるというもの。基礎原理は「胸腔内の心臓は肺や気道に密接しており、心臓の収縮が声帯を通る空気の流れを力学的に変化させるため、音声信号のスペクトル特性に影響する」ことに基づく。同社の特許技術は、固定電話・スマートフォン・スマートスピーカーなどあらゆる音声機器に対応する。これまでの研究成果は、European Heart Journalや、Journal of Cardiovascular Electrophysiologyに発表されてきた。

Cardiokolの「kol」はヘブライ語で「声」を意味し、同社では先端のウェアラブル機器などには馴染まない高齢者にとっても扱いやすい「電話音声」を選択しており、頻繁にモニター可能で費用対効果の高い手法を志向している。Cardiokolの技術はまだ検証段階にあるが、今後は「あー」といった特定の音声からではなく、「通常の会話」からの検出を見据えた技術の拡張を続けている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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