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RapiD_AI – 事前学習で「次のパンデミック」に備える

感染症学および公衆衛生学的見地から考えた時、COVID-19のパンデミックが「人類が経験する最後のパンデミック」とはならない可能性が高い。パンデミックの発生を完全に防ぐことは容易ではないが、適切な準備によってその悪影響を「コントール」することはできるかもしれない。

英オックスフォード大学の研究者らは、パンデミックへの備えを向上させるためのツールとして、RapiD-AIと呼ばれる深層学習フレームワークを開発している。medRxivからプレプリント論文として公開されたチームの研究論文によると、RapiD_AIはプレパンデミック(2016年から2019年)の入院患者コホートデータ、およびパンデミック後の患者データなどを利用し、深層学習モデルの事前学習を行いながら、事後データによって微調整を加えることで、患者の増悪リスクやICU入室、呼吸器使用、死亡などの悪化予測タスクを高速かつ高精度に行おうとするもの。実験では、深層学習モデルの事前学習により、パンデミック初週から19週までの間に順次、劇的に予測パフォーマンスを向上させることに成功した。

著者らは「このアプローチが、新規感染症のパンデミックに伴う患者管理およびリソース最適化に有効となる可能性」を指摘しており、本研究知見を活用しつつ、既存データの収集とこれに基づく事前学習が来る危機への必要な準備となり得ることに言及する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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