医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例医療システム・医療問題へのAI活用事例テキストメッセージのNLP解析 - 増悪する若年者メンタルヘルス

テキストメッセージのNLP解析 – 増悪する若年者メンタルヘルス

テキストベースの無料メンタルヘルスサービスを提供する「Crisis Text Line」はこのほど、同団体の活動を通じて明らかにされた「米国におけるメンタルヘルス状況」に関する報告書を公開した。同報告書は、2021年中の利用者とカウンセラーとのテキスト会話について、自然言語処理(NLP)を用いて解析したもの。

「United in Empathy」と名付けられた報告書では、130万件に及ぶ会話(総計4000万通のテキストメッセージ)を解析対象としている。会話の70%は25歳以下のユーザーであり、特に若年者が抱える不安・うつ・自殺念慮などのメンタルリスクの深刻さが強調されている。特に、新型コロナウイルス感染症の拡大が「若年者のメンタルヘルスを著しく増悪させた事実」が明らかにされており、2020年との比較においても「リスクは増大した」としている。特徴的であったのは、パンデミック前と比較して「食べること、およびボディイメージの問題」が急増しており、ユーザーがこの話題を持ち出す頻度は17%増加していた。また、学校における遠隔授業が一般化したことを受け、一時的に「いじめに関する会話」は40%減少していたが、全国的に対面授業の再開が進むと、再度この種の「学校関連ストレス」が話題として増加したとしている。

米国では、10-24歳の若年者における死亡原因の第2位に自殺があり、不慮の事故に次ぐ死亡者数となっている(CDC資料参照)。「医療機関にコンタクトを取る前のハイリスク集団」にいかにアプローチし、その状況を適切に評価するかが課題となっているが、テキスト会話へのNLPを用いた解析手法は、全体傾向の評価および個別評価の両面においてその大きな可能性を示している。

関連記事:

  1. HealthRhythms社 – AI活用の予測型メンタルヘルスプラットフォーム
  2. メンタルヘルスへのチャットボット – 自殺リスク発言を遺書から学習
  3. デジタルツールによるメンタルヘルスの改善
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事