新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴い、集中治療室における人工呼吸器の需要は急増した。一度挿管した患者をいつ抜管し、人工呼吸器から離脱させるかについての判断は、呼吸数や換気量などを指標とする「自発呼吸試験(SBT)」を経て行われる。しかし、SBTの評価を経ても抜管の失敗、再挿管に至る例もあり、呼吸器離脱成功への予測精度改善とプロセスの標準化が課題となっていた。
カナダ・オンタリオ州に所在するオタワ病院では、重症患者における自発呼吸の再開タイミングを予測するAIツール「Extubation Advisor」を採用し、その評価を進めている。Extubation Advisorは、人工呼吸中の患者におけるバイタルサイン(血圧・酸素濃度・呼吸リズム・心拍数など)を常時監視し解析することで、人工呼吸器の離脱タイミングを予測するもの。研究成果はBMJ Openから公開されている。研究論文では、ツールに統合されたAIモデルで「低リスク」と評価された患者では、抜管失敗の発生率は11%、高リスク患者での抜管失敗は21%であった。また予測モデルと臨床評価の双方で高リスクと判断された患者においては、38%が抜管に失敗したとの検証結果が得られた。
本研究では、ユーザーインターフェースと機能性に関しても使用者から好意的な評価が示されており、Extubation Advisorの臨床現場への導入可能性が確認された。デバイスを開発したオタワ大学のAndrew Seely氏は「現在、ICU患者の7人に1人が抜管に失敗する状況にある。長期間の人工呼吸は患者に害を及ぼし、一方、早期抜管で再挿管されてしまうことも患者の回復に大打撃を与える。我々が開発した世界で最初期の抜管判断支援ツールによって、治療の改善と標準化に貢献できると考えている」と語った。
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