自閉スペクトラム症(ASD)には食行動の偏りが知られており、例えば特定の食事を避ける、特別な食事時間帯を要する、非社会的な食事行動を取る、などがある。米アーカンソー大学の研究グループは、機械学習手法によって、様々な食品の匂いや味に対する生体データと行動反応を分析し、ASDを検出する研究に取り組んでいる。
アーカンソー大学の公表によると、同プロジェクトはアーカンソー・バイオサイエンス研究所から3年間で15万ドルの助成を受け、2年目を迎えているもの。研究を主導するHan-Seok Seo准教授は、感覚科学・行動神経科学・生体情報・食行動学の専門家で、食事に関する知覚と行動からASD児と非ASD児を区別するスクリーニング手法を確立しようとしている。一例として、ペパーミントやレモン、クローブ(チョウジ)などの匂いは、ASD児に強い反応を引き起こすことが知られており、怒り・驚き・嫌悪のレベルを高める可能性があるという。チームでは特定の食品テストサンプルに対するユニークな知覚行動パターンから、ASD児をスクリーニングする機械学習アルゴリズムの開発を進めている。
Seo氏がASDの評価に感覚処理を用いる可能性に興味をもったきっかけのひとつは娘の誕生だった。同氏は目を合わせようとしない娘を心配したことから、ASD児の特徴を知ることとなった。実際のところ、彼の娘はASDの診断とはならなかったが、嗅覚や味覚に対する過敏性がASDにどのような役割を果たしているかに興味を持った。同じようにASDの可能性を心配する親の不安解消のためにも、当該アプローチが早期発見の可能性をもたらし、より低コストで現実的な手法を確立し得ると思い至ったという。開発中のシステムは、ASDの可能性が高い児にさらに包括的なスクリーニングプロセスを受けさせるための、プライマリスクリーニングの役割が期待されている。
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