てんかんは「脳内の電気的活動の乱れ」に基づく発作を繰り返す神経疾患で、世界人口の1%が罹患する。てんかん発作を抑制する薬物治療は約70%の患者に有効で、治療の焦点は「発作のない状態」を達成し、維持することにある。豪・モナシュ大学のチームは「てんかん患者が発作を起こさなくなる確率を予測」するAI研究に取り組む。
Brainに発表された同研究では、スコットランド・グラスゴーの専門クリニックに通院した1,795人を対象としている。30年以上に渡る臨床データから予測モデルを構築し、その妥当性を検証した。本研究では「マルコフモデル(Markov model)」を活用しており、これは任意のタイミングにおける状態の確率分布が「直前の状態のみに依存する」ような確率過程のことで、時間経過に伴う病状変化をモデル化できる。検証結果では、てんかん症状が本モデルで説明され得ることを確認し、また「一度発作のない状態が達成されれば、そこに至るまでに試した抗てんかん薬の数に関わらず状態を維持できる可能性が高い」ことが示唆されている。
筆頭著者のHugh Simpson氏は「この結果に我々は驚くとともに、希望に満ちた結果だと感じた。つまり、多くの薬を試したとしても、てんかん患者のトンネルの終わりにはまだ光があるということだ。この発見は何度も薬物治療に失敗すると悲観的になりがちな臨床的直感に反する」と語った。チームでは、この予測モデルから臨床医がより簡単に利用できるリスクマップの作成を計画している。
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