肺がんは世界で最も罹患率の高いがん種であり、約半数の症例で放射線治療が行われている。しかし、放射線治療計画の立案には数日から数週間を要し、高度に訓練された医師間であっても、どの組織にどの程度の放射線を照射するのかに関する判断にはばらつきがある。
米ボストンに所在するブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究チームは、CTスキャン上の非小細胞肺がん(NSCLC)を数秒で識別しセグメンテーションすることを可能とする深層学習アルゴリズムを開発・検証した。The Lancet Digital Healthに掲載された研究論文によると、このアルゴリズムを使用した放射線腫瘍医(人間+AI)が、アルゴリズムを使用していない医師(人間単独)と同等のパフォーマンスを発揮するとともに、実際の作業時間としては65%短縮できることを実証している。さらにこのブラインドテストでは、「AIが描いたセグメンテーションの品質」が人間の専門医が描いたものよりも高く評価されていた。同院のRaymond Mak医師は「我々のアプローチは、腫瘍のセグメンテーションにおける一貫性の向上と、治療までの時間短縮を実現する。臨床医のメリットとしては、平凡だが複雑なPC作業が減ることで、燃え尽き症候群のリスクを低減し、患者と向き合う時間を増やすことができる」と述べている。
研究チームは今後、がん治療中に放射線を受けることが好ましくない周辺臓器を特定し、放射線治療から適切に除外するシステムの構築も計画している。彼らは、AIとのパートナーシップが実臨床に役立つことを実証するため、「医師がAIとどのように相互作用するか」に焦点を当てた研究計画を立案し、「人間とAIが描いたセグメンテーションの両方を検証できる、独立した第2のセグメンテーションアルゴリズムを開発中」としている。
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