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音声データからCOVID-19を検出するスマートフォンアプリ開発

COVID-19の罹患は上気道・声帯への影響から音声に変化をもたらすため、AIによる音声解析で新型コロナウイルス感染を検出する可能性が各所で検討されている。英ケンブリッジ大学のチームが公開するスマートフォンアプリ「COVID-19 Sounds」は、ユーザーの音声をクラウドソーシングで収集し、COVID-19を検出するアルゴリズム開発に活用しようとするものだ。

オランダ・マーストリヒト大学のチームは、COVID-19 Soundsのデータセットから構築したAIモデルの性能を、欧州呼吸器学会(ERS)の2022国際会議で発表(抄録 OA1626)している。スマートフォンにインストールされた同アプリ内で、ユーザーは年代・性別・病歴・喫煙状況といった基本属性をチェックし、深呼吸を5回、咳を3回、短い文章「I hope my data can help manage the virus pandemic」などの音声を録音する。収集された893件のデータ(陽性者を含む)からLong-Short Term Memory (LSTM)をトレーニングしており、COVID-19の識別において感度84%・特異度83%を達成した。この結果は抗原検査の特異度99.5%より低いものの、その感度56.2%を有意に上回っていた。

マーストリヒト大学データサイエンス研究所のWafaa Aljbawi氏は「抗原検査は我々のモデルよりも多くの陽性者を陰性(偽陰性)と判定するが、このことは感染者を見逃さない観点で重要だ。一方、LSTMモデルは偽陽性を多く判定することになるが、音声の判定は実質的に無償のスクリーニングとなり、陽性となった人をPCR検査に誘導できる」と研究の意義を説明する。本プロジェクトは開始以来、36,116名の参加者から53,449件の音声サンプル収集を進めたとのことで、チームではさらに大規模なサンプル数での検証を計画している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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