AIの採用により効率的なスクリーニング・診断・治療が行われるようになっても、人間的要素が重要であることに変わりはないのかもしれない。シンガポールの南洋理工大学(NTU)のチームは、「予防医療で、同じ介入をAIと人間の専門家が促した場合、AIに対する信頼度の方が低くなる」ことを示した研究成果を発表した。
Production and Operations Managementに掲載された同研究では、韓国において健康モバイルアプリのユーザー15,000人を対象とした調査を行っている。ユーザーはアプリを通じて特定の歩数を歩くよう促されるが、そのポップアップ通知に「”AI”はあなたが今後7日間で○○歩を歩くことを推奨しています。参加しますか?」という文面と、「”健康の専門家(Health expert)”はあなたが〜」という主語部のみが異なるメッセージが表示され、対照群には、AIにも人間の専門家にも言及しない通知が行われた。その結果、ユーザーがAIの提案を受け入れる割合は、人間の専門家の場合よりも有意に低かった。また、AIによる介入に「人間の専門家による意見と組み合わせたこと」を強調したり、目標設定について「どのようにAIが使用されたかを説明し、アルゴリズムの透明性を高めること」によって、ユーザーの受容度合いが高まることも明らかにした。
研究を主導したHyeokkoo Eric Kwon氏は「AIがより質の高い介入を提供する可能性があっても、人間の専門家による意見より信頼度が低くくなることが明らかになった。健康へのAI介入がさらに増えても、人間的要素は依然として重要と言え、取って代わるのではなくAIが人間を補完するときに最もうまくいくことが示されている」と語った。なお本研究は、「テクノロジーが人類に与える影響」などの課題に取り組むNTUの5カ年戦略計画「NTU2025」のもとで実施されている。
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