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抗コリン薬の副作用リスクを評価するAIツール

抗コリン薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンが受容体に結合するのを妨げることで効果を発揮する。多くの医薬品が抗コリン作用を有するが、アセチルコリンは多様な細胞同士の連絡を助けているため、この遮断は多彩な副作用として表出する。特に高齢者では、転倒リスクと長期使用による認知症リスクが問題となりやすい。英エクセター大学の研究チームは「抗コリン薬の副作用リスクを推定するAIツール」を開発し、処方リスクの低減と管理に取り組む。

Age and Ageing誌に掲載された同研究では、自然言語処理と化学構造解析を用い、処方薬に含まれる抗コリン作用をスコアリングするオンラインツール「IACT: International Anticholinergic Cognitive Burden Tool(国際抗コリン作用認知負荷ツール)」を開発した。同ツールは機械学習手法に基づき、報告済みの有害事象からスコアを付与し、処方薬の化学構造と密接に整合させることで、従来の評価ツールよりも正確なシステムを実現した。チームは110名の医療専門家を対象に調査しており、その85%が「抗コリン作用の副作用リスクを評価するツールがあれば使用したい」と回答しており、臨床現場での需要も確認されている。

著者でエクセター大学のChris Fox教授は「この新しいツールは、テーラーメイドの個別化医療を実現する有望な手段となり、望まない抗コリン作用を回避しながら、患者に安全で効果的な治療を提供できる」と語った

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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