認知症の有病者は「2030年までに全世界で7500万人に達する」との推計がある。また、脳の特定部位に「レビー小体」と呼ばれるタンパク質の集合体が蓄積する「レビー小体型認知症(DLB: Dementia with Lewy body)」は、認知症患者の死後において25%以上で発見されることが分かっている。これは、DLBの多くが一般的なアルツハイマー病(AD: Alzheimer’s disease)と診断され、DLBの有病者数は過小評価されていることを意味している。英サリー大学のチームは、認知症タイプを識別するため、AIを適用した脳波データを低コストな診断ツールとして利用する研究を行っている。
Alzheimer’s Research & Therapyに発表された同研究では、開眼時と閉眼時の脳波データに基づき、認知症タイプを識別する機械学習モデルを開発した。従来の研究では閉眼時脳波データに焦点が当てられてきたが、本研究では開眼時の脳波データも併用することで分類精度が有意に向上することを示した点が目新しい。モデル性能は、健常者と認知症有病者との分類で感度92%・特異度87%、DLBとADとの分類で感度91%・特異度75%を達成している。脳波検査は非侵襲的かつ広範に利用されているため、脳MRIなどの専門的画像検査手法よりも大幅に低コストであると、チームではその優位性を主張する。
DLB患者は一般的なAD患者と比べ、治療薬への反応と病状の進行が異なるため、初期の正確な診断でより最適な治療計画の実現とアウトカムの改善が期待できる。著者でサリー大学のRoman Bauer氏は「我々の研究は、脳波データのAI分析を認知症診断ツールとして使用することで、多くの人々の人生を変えられる可能性を示した。開眼時と閉眼時の脳活動を組み合わせた我々の機械学習アルゴリズムは、死後に発見されることが多いDLBを生前に、より早く診断することを可能にする」と語った。
関連記事: