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川崎病かMIS-Cか? – 小児発熱疾患を識別するAI

日本の小児科医である川崎富作が発見した「川崎病(KD: Kawasaki disease)」は、乳幼児における原因不明の発熱疾患として知られる。COVID-19の流行で、KDに類似した症状を呈する小児疾患「MIS-C: multisystem inflammatory syndrome in children」が出現し、症状として近似した両疾患が注目を集めている。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のチームは、MIS-CとKDを識別する機械学習アルゴリズムを開発し、その早期診断と正確な区別に取り組む。

Lancet Digital Healthに掲載された同研究では、MIS-C、KDまたはその他の発熱疾患と診断された1,500人を超える患者群から、年齢、KDに特徴的な5つの臨床症状、17の検査値を用いて、「KIDMATCH」と呼ばれるディープラーニングアルゴリズムを構築した。研究に協力した各小児病院での外部検証の結果、KIDMATCHはMIS-C・KDといった発熱疾患を90%以上の精度で正しく区別することができた。

著者でUCSDの川崎病研究センター長であるJane C. Burns氏は「40年間に渡り、川崎病の研究コミュニティは診断テストの作成に取り組んでは失敗してきた。しかし今回わずか1年半の間で、どの病院でも実施可能な検査から発熱疾患診断の支援ツールを作成し、90%を超える精度を達成した」と語った

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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