医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究「神経変性疾患の新しい病態パターン」を特定するAI

「神経変性疾患の新しい病態パターン」を特定するAI

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)やアルツハイマー病、パーキンソン病といった神経変性疾患における新しい病態パターンを特定するAIツールを開発した。研究成果は、Nature Computational Scienceに掲載されている。

神経変性疾患は一般的に複雑で多様な症状を伴い、進行速度も患者間で様々であることが知られる。MITの研究者で本研究論文の主執筆者であるDivya Ramamoorthy氏は「我々が取り組んだのは、特定の集団で共有される『ある種の一貫したパターン』が存在するかどうか、そしてどの程度までこれを機械学習で特定できるかということだ」と話す。研究チームは、ALSの臨床試験と観察研究から得られた5つの縦断的データを用いて機械学習モデルを構築し、これらの課題を解決することに成功したとする。モデルを用いた検証では、ALSにおいて1. シグモイド型高速進行、2. 安定型低速進行、3. 不安定型低速進行、4. 不安定型中速進行の4つの支配的な病態パターンを確認している。

これらの新しい病態パターンは強い非線形特性を示していたが、チームの機械学習モデルは、いわゆる「functional cliff」(急激に機能低下を来す点)を患者が経験する軌跡を正確に捉えることができた。この事実は今後、治療法開発や臨床試験の設計にも大きな影響を与えるとみられ、さらなる検証と他疾患への適用拡大が期待されている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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