臨床現場では電子カルテ上にテキストの重複が多発しており、そのことは情報の真実性に疑念を生じさせ、情報の検索と確認を困難にしている事実がある。米ペンシルベニア大学の研究チームは、AIを用いた患者カルテ解析によって「臨床記録の50%以上が過去のテキストと重複している」ことを示した。
JAMA Network Openに掲載された同研究では、2015年から2020年までにペンシルベニア大学の医療システム内で記された全ての患者に関する、1億件超、約330億語のテキストを解析している。その結果、50.1%のテキストが重複しており、また重複テキストのうち54.1%は同一の著者内でのコピー、45.9%は他者間でのコピーであった。一方、「要約による重複情報や言い換え」を今回の分析で捉えられていないため、この結果でさえまだ重複の度合いを過小評価しているとチームは主張する。
著者らはこれらの結果から「カルテ記録を読む医療者は、500語の新規テキスト情報を得るために、10件以上のノートを閲覧しなければならない計算となる」としている。重複した記録には、不完全で古い情報が含まれている場合が多く、医療者が提供するケアの質に影響を与える可能性もある。本研究の結果は、現代の電子カルテシステムにユーザーが適応した結果であり、個人のミスとは必ずしも言えない。また、コピー&ペーストをただ一方的に制限することは、かえって情報を散在させることになりかねないため、「本課題は、システムの構造的な問題から評価・改善する新たなパラダイムを提案していく必要性がある」とチームでは結論付けている。
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