臨床医は、診察室に入る患者の歩行を見て、パーキンソン病などの神経疾患を疑うことがある。米イリノイ大学の研究チームは「廉価なビデオカメラの映像から、神経変性疾患患者に特有となる歩行の微妙な変化を捉えるAI技術」の開発に取り組み、熟練した臨床医のスキルを高度に再現しようとしている。
IEEE Journal of Biomedical and Health Informaticsに掲載された同研究では、トレッドミル上を歩く多発性硬化症・パーキンソン病・健常者の3群に対し、2台の汎用的なデジタルカメラ(解像度800×448ピクセル)を正面および右側に設置し、下半身と脚の動きを30フレーム/秒で記録した。チームは、モーションキャプチャにより、腰・膝・足首・足の座標移動から神経変性疾患を識別する多様なAIモデルを構築した。計16種のモデルを検証した結果、1次元畳み込みニューラルネットワークでは、多発性硬化症とパーキンソン病の歩行障害を最も高精度に分類し、AUCとして0.93を示していた。
著者のRichard Sowers氏は「廉価なビデオ機器と、オープンソースの画像処理ソフトから得られた今回の研究成果に、我々も驚いている。適切に開発すれば、革新的なツールになる可能性がある」とする。研究チームでは、本研究アプローチを他の研究者が利用できるようオンラインで詳細を無償公開する。
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