男性型脱毛症(AGA)は男性の8割、女性の5割(女性男性型脱毛症:FAGA)に発症するとされ、最も一般的な脱毛症のタイプと言える。中国・青島科学技術大学のチームはAIを用い、脱毛の一因である活性酸素種の中和に最適な化合物を予測し、毛髪再生に応用しようとしている。
米国化学会(ACS)のNano Lettersに掲載された同研究では、抗酸化酵素であるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)を模した化合物「ナノザイム(nanozymes)」の設計に機械学習手法を用いている。脱毛のメカニズムには、毛包にダメージを与える過剰な活性酸素種が関係していると考えられてきた。そのため、人工的に設計した抗酸化酵素で活性酸素種のレベルを抑制することにより、薄毛を治療できる可能性がある。研究チームでは、ナノザイムの候補として遷移金属元素・リン酸塩・硫酸塩の組み合わせ91種を機械学習モデルでテストし、化合物「MnPS3」が最も強力なSOD様活性を持つと予測している。
チームはこの知見を元に、MnPS3のマイクロニードルパッチを作成し、AGAモデルのマウスを治療した。その結果、テストステロンやミノキシジルといった既存手法で治療したマウスよりも、太い毛が再生され、より密度の高い毛に覆われることを確認した。著者らは「ナノザイムの設計に有効なAI手法を示し、ナノザイム治療薬による毛髪再生の可能性が開かれた」としている。
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