動脈硬化性心疾患(ASCVD)の予防には、スタチン系薬による脂質コントロールが各種ガイドラインで推奨されているが、実際の患者選定には「主要有害心血管イベント(MACE)の10年リスクスコア」が参考となる。ただし、集団スクリーニングでは揃わない情報も含むことから、よりシンプルで利用しやすいアプローチが望まれていた。
米マサチューセッツ総合病院の研究チームは、「1枚の胸部X線画像」からASCVDに起因するMACE(脳卒中・心筋梗塞・死亡)の10年リスクを予測するディープラーニングモデルを開発し、北米放射線学会(RSNA)年次総会で発表している。本研究では、米国立がん研究所(NCI)のがんスクリーニング臨床試験への参加者40,643名の胸部X線147,497枚を用い、1枚の胸部X線画像から心血管疾患による死亡リスクを予測する「CXR-CVDリスクモデル」を開発した。同モデルをMass General Brighamの外来患者でスタチン治療対象となり得る11,430名で性能検証したところ、予測リスクと実際に発生したMACEとの間には臨床的に有意な相関がみられた。さらに、このモデルを従来確立されたMACEリスクスコアと比較したところ、同等以上の性能を示したとする。
チームのJakob Weiss氏は「我々は、1枚の胸部X線画像が大きな価値を持つことを示した。これまで長い間、X線画像が従来の診断所見を超える情報を捉えていることは認識していたが、堅牢で信頼できる手法を持たないために有効なデータ利用ができなかった。AIの進歩が今、それを可能にしている」と述べた。
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