英Imperial College Londonの研究チームは、モーションキャプチャ技術とAIを用いた「運動障害の進行をモニタリングする新手法」を開発した。研究論文は2報として19日、Nature Medicineから公開されている(「Wearable full-body motion tracking of activities of daily living predicts disease trajectory in Duchenne muscular dystrophy」「A wearable motion capture suit and machine learning predict disease progression in Friedreich’s ataxia」)。
これらの研究論文では、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)とフリードライヒ運動失調症(FA)という異なる2つの希少疾患において、1. 明確な動作パターンの特定 2. 将来的な進行予測 3. 臨床試験の大幅な効率向上 の3点を実現する新しいモニタリング手法として提唱している。DMDとFAは運動機能に深刻な影響を与え、最終的には麻痺に至る稀な遺伝性疾患である。いずれも根本的な治療法は確立されていないが、今回の研究成果により「新たな治療法の探索」が大幅に加速されることが期待されている。
DMDやFAの進行モニタリングは通常、臨床環境での集中的な検査によって行われる。今回のアプローチは収集したデータの正確性と客観性を高め、より精密な評価を可能にするものとなる。研究者らは「これらの疾患マーカーを用いることで、既存手法と比較して、新薬開発に必要な患者数が大幅に少なくなる」としている。これは、適切な患者を特定し試験に組み入れることが非常に困難な希少疾患においては特に重要な点となる。また同時に、認知症や脳卒中、整形外科疾患など、動作に影響を及ぼす一般的な疾患のモニタリングや診断にも利用可能である可能性も指摘しており、研究成果の適用余地と発展性に大きな期待が集まっている。
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