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「外傷性出血におけるAI研究」の現在地

外傷は18-39歳における世界的な死因の第1位で、その多くは出血に起因する。特に戦場では、外傷時の凝固障害による制御不能な出血が主な死因となる。AI/機械学習が外傷研究に採用されるようになり、外傷性出血に対するAIの現時点での役割を明確にするべく、カナダ国防省の国防研究開発所(DRDC)の研究チームはシステマティックレビューを行い、その成果を公開した。

Military Medical Researchに掲載された同研究では、外傷性出血の診断および治療戦略における機械学習の利用に焦点を当てたレビューを行っている。スクリーニングを経て本レビューに採用された研究は89件で、研究は大きく5つの分野、①転帰の予測、②トリアージ目的のリスク評価と重症度判定、③輸血の予測、④出血の検索、⑤凝固障害の予測、に分類された。多くの研究で、現在の標準的な外傷治療フローと比較した機械学習モデルの利点を実証しているが、そのほとんどがレトロスペクティブな研究であった。また、複数ソースから取得したテストデータセットを用いてモデルを評価した研究はごくわずかであった。

戦傷病治療において、包括的なダメージコントロール戦略の進歩があっても、外傷と出血による死亡は依然として大きな問題となっている。研究チームでは「機械学習ベースの技術が外傷治療の全過程で不可欠な要素になりつつある。今後は、モデル間の性能を厳密に評価する標準化された指標が必要となっていく」と結論付けている。

参照論文:

Artificial intelligence and machine learning for hemorrhagic trauma care

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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