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BacterAI – 年間100万回の微生物実験を可能にするAI

細菌は生命維持に必要な20種のアミノ酸を組み合わせて摂取する。しかし、細菌の種ごとに好みが異なるアミノ酸の組み合わせは膨大であり、ごく一部しか解明されていない。応用が進む細菌叢(マイクロバイオーム)研究を支援するため、ミシガン大学とイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームは「AIに自律的な実験をゲーム形式で割り当て、細菌の栄養となるアミノ酸の組み合わせを特定する手法」を開発している。

Nature Microbiologyに発表された同研究では、「BacterAI」と呼ばれるプラットフォームを用い、Streptococcus gordoniiとStreptococcus sanguinisという2つの口腔内連鎖球菌のアミノ酸要求量を特定した。BacterAIは、科学的な質問をゲーム形式に変換し、そのゲームを膨大な施行回数で繰り返し遊び学習することで、その結果をヒトが解釈できる論理的ルールに落とし込むができる。このアプローチは、ラベル付きの大規模なデータセットを機械学習モデルに送り込む従来手法と異なり、実験を通じて独自のデータセットを作成し、過去の実験結果から「どのような実験で最も情報が得られるか」を予測するというもの。これにより、十分な規模のデータセットを必要とせず、自律的な研究を可能にする。

BacterAIは、従来研究者が何年もかけて行う実験を、2020年1月以降に931,038件完了したという。本研究の主著者であるAdam Dama氏は「我々のプロジェクトのようなAIの集中的応用が、日々の研究を加速させることは明白だ」と語っている

参照論文:

BacterAI maps microbial metabolism without prior knowledge

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