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小児呼吸器感染症の「入院時病原体予測」

急性呼吸器感染症(ARI)は、小児期に最も多い感染症であり、世界中で小児の入院や死亡の主要な原因となっている。国立台湾大学の研究チームは、入院時の臨床所見から小児ARIの病原体を予測する機械学習モデルを構築した。

Journal of Microbiology, Immunology and Infectionから公開されたチームの研究論文によると、2010年から2018年の間にARIで入院した小児患者1.26万人の臨床データからこの機械学習モデルを導いている。アウトカムには、6つの一般的なARI病原体(アデノウイルス、インフルエンザウイルスA型およびB型、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、肺炎マイコプラズマ)を選択し、9つの臨床的特徴(年齢、イベントパターン、発熱、CRP、白血球数、血小板数、リンパ球比、ピーク体温、ピーク心拍数)から病原体の予測を行っている。いずれも高い予測精度を示しており、特に肺炎マイコプラズマについてはAUCとして0.87と、特に高い性能を示していた。

著者らは「入院時に小児ARIに関連する潜在的な病原体を特定するための、新しい手法を実証した」としており、モデルを臨床ワークフローに組み込むことで、患者の転帰を改善し、不必要な医療費を削減できる可能性を強調している。

参照論文:

Clinical characteristics of hospitalized children with community-acquired pneumonia and respiratory infections: Using machine learning approaches to support pathogen prediction at admission

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