医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究アスリートの「微細な脳損傷」を捉えるAIツール

アスリートの「微細な脳損傷」を捉えるAIツール

ラグビーやホッケー、サッカーなどのコンタクトスポーツのアスリートでは、若年期の脳震盪が後の認知機能低下につながる可能性などが指摘されている。米ニューヨーク大学グロスマン医学校放射線科の研究チームは、頭部MRIを解析するAIツールを用い、繰り返される頭部損傷に起因する「脳構造の微細な変化」を正確に捉えられることを明らかにした。

The Neuroradiology Journalからこのほど公開された研究では、36人のコンタクトスポーツをする大学選手(主にサッカー選手)と45人のノンコンパクトスポーツの大学選手(主にランナーや野球選手)の数百枚の脳画像を用いている。これらの画像データから、脳組織の異常な特徴を特定した上で、これらの要素に基づき、頭部外傷を繰り返し受けた選手とそうでない選手を識別する機械学習モデルの構築に成功した。

本研究の主執筆者であるJunbo Chen氏は「このアプローチが、従来のMRI検査では捉えられなかった『見えない創傷』を検出のに役立つ」と述べた上で、「脳震盪だけでなく、より繊細でより頻繁な頭部への衝撃から生じる損傷を検出するための重要な診断ツールになるかもしれない」としている。

参照論文:

Identifying relevant diffusion MRI microstructure biomarkers relating to exposure to repeated head impacts in contact sport athletes

関連記事:

  1. BrainScope社 – 頭部外傷での「CT検査の必要性」を低減するAIツール
  2. 「外傷性出血におけるAI研究」の現在地
  3. ニューロイメージングAI「Jazz」がCEマークを取得
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事