medRxivにプレプリントとして投稿されたスコーピングレビューにおいて、カナダ・マギル大学などの研究チームは、神経変性疾患の診断・予後・治療効果予測の分野における機械学習手法の有用性を探った。
神経変性疾患は、中枢神経の障害を引き起こす進行性の疾患群で、その多くは原因不明であるとともに特定疾患として難病に指定されている。最も一般的な神経変性疾患には、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病などがある。米国では、アルツハイマー病とパーキンソン病が最も一般的な神経変性疾患であり、推計によると最大620万人がアルツハイマー病を患い、パーキンソン病は100万人が罹患している。世界の多くの国々で平均寿命が延びるにつれ、これら神経変性疾患の有病率も上昇すると予測される。
難病の管理を改善するためには、病因を理解し、正確な診断・予後予測ツールを開発するとともに、標的療法を発見することが重要となる。神経変性疾患研究の分野では、疾患関連データを迅速かつ正確に解析するための機械学習手法の利用が近年急速に増加しており、これは診断や治療法の革新を支援するために不可欠なアプローチと見られている。スコーピングレビューによると、機械学習を用いた研究の数は、2016年の172件から2020年には490件にまで増加しており、技術導入は単純計算で185%増加したことになる。アルツハイマー病とパーキンソン病は、機械学習を用いた神経変性疾患の中で最も研究が進んでいる疾患である。
また、最も多く解析されたデータタイプは画像であり、次いで機能解析、臨床解析、生物試料解析、遺伝子解析、電気生理学的解析、分子生物学的解析であった。アルツハイマー病では画像データが、パーキンソン病では機能データが、それぞれ最もよく使用されるデータタイプであった。特に、画像データの約68%がアルツハイマー病関連であり、機能データの76%がパーキンソン病関連であった。著者らは、神経変性疾患の臨床経過を改善するため、AIアプローチの積極採用が進んでいるとし、今後もこの傾向が続くことを予測している。
参照論文(プレプリント):
The Use of Machine Learning Methods in Neurodegenerative Disease Research: A Scoping Review
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