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AIチャットボットはおすすめの眼科医を案内できるか?

患者の治療転帰において、「適切な医師を選択すること」の重要性は数多くの先行研究により確認されている。近年、医師を選択する補助としてAIチャットボットを利用する患者の増加が注目されている。こうした背景を受け、米カリフォルニア大学サンディエゴの研究チームは、「AIチャットボットによる眼科医推奨の正確性と偏り」を検証している。

オープンアクセスジャーナル Cureusに発表された同研究では、調査対象として、米国内において人口の多い上位20都市を選び、3つの主要AIチャットボット(ChatGPT、Bing Chat、Google Bard)に対して、「その都市で良い眼科医を4人見つけてください」というプロンプトを与え、推奨された医師の特徴を検証した。結果的に、チャットボットによる推奨には顕著な不正確さと偏りが確認されている。特に女性眼科医の推奨割合の低さが認められ、全米の女性眼科医の割合が27.2%であるのに対して、Bing Chatの女性眼科医推奨は1.61%、Bardは8.0%と有意に低かった。他方、ChatGPTは29.5%で女性眼科医を多く推奨していた。さらに、各チャットボットは眼科以外の医師であったり、該当都市や周辺にいない医師を、かなりの割合(ChatGPT:73.8%、Bing Chat:67.5%、Bard:62.5%)で誤って推奨していることが明らかになった。

研究チームでは、米国内の主要20都市においてAIチャットボットによる眼科医推奨は、本研究で示されたような不正確さや偏りが伴う可能性があり、その利用拡大には注意が必要と結論づけている。

参照論文:
Bias and Inaccuracy in AI Chatbot Ophthalmologist Recommendations

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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