COVID-19のワクチン接種事業では、日常診療業務と並行して、市民からの多数の問い合わせに対応が求められた。医療機関の人的資源には限界があり、費用対効果の高い窓口としてAIチャットボットの有効性が期待されている。米コロラド公衆衛生大学院の研究チームは、感染症とワクチンの正確な情報を伝えるAIチャットボットシステムの概念実証を行った。
Digital Healthに掲載された同研究では、2021年4月〜2022年3月の調査期間に、コロラド州5つの医療機関との提携で2,479名のユーザーが参加し、SMSメッセージまたはウェブサイト上でチャットボットを通じたCOVID-19関連のメッセージ交換が行われた。システムに対して最も多かった問い合わせは、ブースター接種とワクチン接種会場に関するものであった。ユーザーの意図とチャットボットの回答との適合精度はシステム立ち上げ直後で54.0%であったが、システムの定期的な見直しにより、調査期間終了時点では91.1%という高いものとなっていた。また、回答までの平均応答時間は0.199秒と非常に迅速な結果を示している。
検証が行われた2022年4月時点で、米国では98.4万人の累計死者数を記録していたが、市民の間でワクチンには強い躊躇と抵抗感が認められ、接種率は対象者の69.9%に留まっていた。本研究から、チャットボットシステムがワクチン情報へのアクセス改善に役立つ実現可能性の高いツールであるとチームでは結論付け、ワクチン接種率向上に対する有効性のさらなる検証実施を予定している。
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