医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例機械学習×MRI:パーキンソニズムの自動鑑別の実現へ

機械学習×MRI:パーキンソニズムの自動鑑別の実現へ

パーキンソニズムを呈するパーキンソン病(PD)、パーキンソニズム型多系統萎縮症(MSA-P)、進行性核上性麻痺(PSP)の臨床的な鑑別は困難な場合が多く、客観的で高精度な診断ツールの開発が望まれている。この課題に対し、米フロリダ大学らの共同研究チームは、MRIに機械学習をかけ合わせたAIDPという手法を開発し、その臨床的鑑別性能を評価する前向き研究の成果を発表した。3月17日よりJAMA Neurologyに掲載されている。

同研究では、PD、MSA、PSPと臨床的に診断がついた40歳から80歳の患者を対象とし、前向きコホート249名(PD:99名、MSA:53名、PSP:97名)と、後向きコホート396名(PD:211名、MSA:98名、PSP:87名)のデータを用いた。3テスラMRI拡散強調像から得た2つのパラメータと、患者の年齢・性別を併せて入力ベクトルとし、サポートベクターマシン(SVM)の学習を行ったものをAIDPと名付けている。前向きコホートのテストセットでAIDPの診断識別タスクを行ったところ、いずれも高精度を示し、各タスクにおけるAUC、陽性的中率(PPV)、陰性的中率(NPV)は以下の通りであった。
・PD vs 非定型パーキンソニズム:AUC 0.96、PPV 0.91、NPV 0.83
・MSA vs PSP:AUC 0.98、PPV 0.98、NPV 0.81
・PD vs MSA:AUC 0.98、PPV 0.97、NPV 0.97
・PD vs PSP:AUC 0.98、PPV 0.92、NPV 0.98
また、AIDPによる予測は、神経病理学的にも93.9%の精度があると検証されている。

研究チームは「本研究の精度はいずれも十分なものであった。今後は、AIDPを神経変性疾患のバイオマーカーと組み合わせて用いることで、疾患の定義や鑑別の精度向上に繋げたい」と述べている。

参照論文:
Automated Imaging Differentiation for Parkinsonism

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R.A.
R.A.
東京大学医学部医学科。医学を学ぶ傍ら、機械学習や深層学習に関心を持ち、シンクタンク・AI企業でのインターンにて、データ分析や社会実装の現場を経験。テクノロジーを活かした知の発掘,医療の質向上の実現を目指している。
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