医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例思春期メンタルヘルスの課題に対するAI活用:システマティックレビュー

思春期メンタルヘルスの課題に対するAI活用:システマティックレビュー

10〜19歳の人口の約7人に1人がメンタルヘルスの問題を抱えていると言われているが、この問題は依然として十分に認識されていない。思春期における精神疾患の罹患率や死亡率を減少させるためには、早期介入と適切なマネジメントが重要であり、AIの活用による貢献が期待されるが、その実態は十分に明らかにされていない。この問題を背景に、カナダの研究チームは思春期のメンタルヘルスにおけるAIの活用についてシステマティックレビューをまとめ、JMIR Mental Healthに発表した。

研究チームによると、2024年7月までに発表された思春期のメンタルヘルスにおけるAIの活用に関する研究を、5つのデータベースを用いて検索した結果、88件の論文が特定された。AIは主に診断(78件)に利用されており、次いでモニタリングと評価(19件)、治療(10件)、予後(6件)が続いた。研究の内容は主に気分障害とうつ病に焦点を当てており、その他には自殺・自傷行為、自閉症スペクトラム、薬物依存、アルコール関連障害などが挙げられた。機械学習モデルに関しては、サポートベクターマシンが最も頻繁に利用されていた(21件)。

研究者らは、「現時点では、AIの活用はほとんどが診断に限られており、今後は他の分野におけるAI研究が促進されることが期待される。また、医療従事者や患者などのエンドユーザーの積極的な関与が、今後の優れたAIアプリケーションの開発において重要である」と述べている。

参照論文:
Use of Artificial Intelligence in Adolescents’ Mental Health Care: Systematic Scoping Review of Current Applications and Future Directions

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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