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AIでメンタルヘルスを指標化する取り組み

メンタルヘルスという定量化が難しい要素に対し、専門家による主観評価を介さず、大規模集団データからの機械学習によって客観的な代理指標を得ようとする試みがある。フランス国立情報学自動制御研究所(INRIA)のグループが研究成果をGigaScience誌に発表している。

GigaScience誌のインタビューに、同研究の著者Denis Engemann氏が答えている。研究チームは英国の長期大規模健康データバンク「UK Biobank」を用いてメンタルヘルスを指標化する機械学習モデルを構築した。UK Biobankにはアンケートデータや脳MRI画像など多面的なデータが含まれ、AIモデルはデータ間の統計学的関連を反映して指標の予測を行う。その結果のひとつとして、従来のアンケートによるメンタルヘルスの評価を経ずに、脳画像の特徴を代理指標としてメンタルヘルスを説明することができるものがある。

研究チームはもともと、生物学的老化のバイオマーカーとして「脳年齢」を導き出す研究を行ってきており、その枠組みを心理的評価の範囲に一般化することで今回のモデル構築に至った。Engemann氏は「この種のアプローチは心理学者に取って代わるのではなく、古典的なアンケートに加えて、より豊富なツールキットを持つことを意味する。将来的には、心理学者と機械学習モデルがコンビを組んで、よりきめ細やかでパーソナライズされた心理評価ができるようになるかもしれない」と語っている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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