医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例心臓CT画像から死亡率を予測 - 多施設共同研究

心臓CT画像から死亡率を予測 – 多施設共同研究

米ロサンゼルスの研究チームが、従来心筋灌流検査時の減弱補正やカルシウム定性評価のみに用いられてきた低線量CT減弱補正スキャン(CTAC)を活用し、AI技術によって胸部における体組成を定量的に評価し、全死因死亡リスクの層別化に役立てる新たなアプローチを提案し、研究成果The Lancet Digital Healthで公開された。CTACは米国で年間600万件以上実施されるが、その診療価値は限定的であったため、既存検査の情報を拡張し、追加の被ばくなしに臨床意思決定を強化することが求められている。

国際共同レジストリREFINE SPECTに登録された11,305例のうち、胸椎T5–T11を含むCTACスキャンと臨床データが揃った9,918例を対象に、AIベースの自動セグメンテーション(TotalSegmentator等)と画像処理技術で骨、骨格筋、皮下脂肪、筋間脂肪、内臓脂肪、心外膜脂肪を抽出。体積指数とCT値(減衰値)の標準偏差を算出し、中央値2.48年(IQR1.46–3.65)の追跡期間中610例の死亡(6%)を観察した。多変量Coxモデルで、内臓脂肪CT値高値(HR2.39、p<0.0001)、心外膜脂肪(1.55、 p<0.0001)、筋間脂肪(1.30、p=0.012)は死亡リスク上昇と関連していることが判明した。一方、骨CT値高値(0.77、p=0.016)や骨格筋体積指数高値(0.56、p<0.0001)はリスク低減と関連し、既存の臨床リスク因子や灌流・カルシウム指標を上回る予後予測能を示した。

著者は「CTACスキャンに含まれる豊富な体組成情報を、追加撮影なくAIで自動抽出できれば、検査価値を飛躍的に向上させ得る」と強調する。今後は、多施設前向きコホートや他の胸部CTへの適用検証、最適カットオフの策定、QALY評価を含む長期アウトカム解析、臨床ワークフローへの組み込みによる実用化研究を推進し、心血管疾患診療における新たなリスク層別化手法として確立する必要があると述べている。

参照論文:

AI-based volumetric six-tissue body composition quantification from CT cardiac attenuation scans for mortality prediction: a multicentre study

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1.片寄駿 旭川医科大学医学部卒(MD)、Columbia University研究員、Accenture, LPIXELにて機械学習エンジニア、医療AIスタートアップ経営など。
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