医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例英バイオバンク、世界最大の全身画像データベースが完成

英バイオバンク、世界最大の全身画像データベースが完成

UK Biobankは、心疾患や認知症、がんなど、重大な疾患の早期診断につながる世界最大規模の全身画像データベースを完成させた。6,000万ポンドを超える投資がされた本プロジェクトでは、英国全土の10万人のボランティアの脳や心臓、腹部、血管、骨、関節などを網羅的に撮影して得られた10億枚以上の画像と、ゲノム、血液、ライフログを統合し、病気が「いつ・なぜ・どのように」起こるかを可視化して早期介入を狙う取り組みで、すでに1,300本以上の査読論文が発表され、臨床現場に成果が現れ始めている。

具体的には、参加者一人につき約5時間でMRI・DEXA・超音波など計1.2万枚の画像を取得し、総計10億枚超の匿名画像を、血液や遺伝子、生活習慣に関する詳細なデータとともにクラウド上で管理、提供している。これらの豊富なデータを活用したAI研究の成果が次々と生み出されており、例えば、心疾患を早期に予測する技術や、MRIを用いて非侵襲的に脂肪肝を診断する手法が開発され、アルツハイマー病やパーキンソン病を早期に予測する研究も進展している。さらに、肥満の遺伝的リスクや脳の萎縮と飲酒量の関係性など、新たな健康リスク因子も次々に明らかになっている。

研究者らは、前例のない規模の画像データにより、人体の仕組みや病気の発症メカニズムの理解が劇的に進展すると期待を寄せている。UK Biobankのデータは、安全なクラウドベースの研究分析プラットフォーム(UKB-RAP)を通じて、承認された研究者に段階的に公開される予定である。

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1.片寄駿 旭川医科大学医学部卒(MD)、Columbia University研究員、Accenture, LPIXELにて機械学習エンジニア、医療AIスタートアップ経営など。
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