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英バイオバンク研究 – 飲酒が増えると脳が減る

ペンシルベニア大学などの研究チームは、「軽度~中等度の飲酒であっても脳への影響は避けられない」ことを成人ビッグデータに基づく解析により明らかにした。

Nature Communicationsからこのほど公開されたチームの研究論文によると、英国バイオバンクに登録のある36,000人以上の成人における脳MRIを調査し、脳のあらゆる部位における白質と灰白質の体積を算出した。飲酒量と脳容積に交絡し得る各種変数(年齢や身長、性別、喫煙、社会経済的因子、遺伝情報など)を調整した上でも、1日平均1単位未満といった比較的少量の飲酒であっても脳容積の減少がみられることを明らかにした。大量飲酒に伴う健康影響は頑健な関連が指摘されてきたが、少量飲酒に伴う脳の器質的障害を示唆した研究は新しく、1日1~2杯の継続的な飲酒によってさえ、脳容積の縮小を介した認知障害リスクを増大させる可能性が指摘されている。

同論文の責任著者であるGideon Nave教授は「これほど大きなサンプル数があれば、1日にビール半量を飲む場合と1本を飲む場合といった、両群の微細な差異も見つけ出すことができる」と述べ、英国バイオバンクデータの有用性を強調する。英国バイオバンクは2006年に開始された長期大規模研究で、50万人の中高年を追跡する世界最大のバイオバンクとして知られている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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