医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例マルチモーダルAIを利用した膠芽腫の検出

マルチモーダルAIを利用した膠芽腫の検出

膠芽腫(GBM)は、最も悪性度の高い脳腫瘍であり、AIを用いた診断および予後予測モデルの活躍が期待されている。既存のモデルは単一モダリティに依存しており、GBMの複雑な分子および病理学的構造を十分に捉えることが困難である。このような課題を背景に、シンガポールと台湾の合同研究チームは、MRI、病理組織、オミクスデータなどを統合し、GBMの診断と予後予測を行うビジョントランスフォーマー(ViT)モデルを開発した。

Computerized Medical Imaging and Graphicsに発表された論文によると、研究チームはまず、WHOの脳腫瘍グレードに基づいてMRI FLAIR画像の分類を行うために、ViTのトレーニングを実施した。その結果、ViTは、クラス不均衡に強い評価指標であるマシューズ相関係数0.8951という優れた予測性能を示し、すべてのグレードにおいて高いF1スコアを達成した(Grade2:0.920、Grade3:0.894、Grade4:0.962)。さらに、病理組織画像と26種類の遺伝子情報を含むRNAシークエンスプロファイルを統合した予後予測のためのマルチモーダルモデルを学習・検証したところ、単一モダリティと比較して優れた予測性能を示したという。

ViTは、畳み込みニューラルネットワークとは異なりアテンションメカニズムを適用するため、GBMのような不均一な浸潤性腫瘍の検出に有利であることが示された。今後は、モデル精度の向上を目指し、転移学習や年齢・治療歴などさらに多様なデータの統合、大規模かつ多民族集団での検証が期待される。

参照論文:

AI-driven multi-modal framework for prognostic modeling in glioblastoma: Enhancing clinical decision support

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Kazuyo NAGASHIMA
Kazuyo NAGASHIMA
長島和世 群馬大学医学部卒(MD)、The University of Manchester(MPH)。WHO/EMROにて公衆衛生対策に従事。2025年度より、アラブ首長国連邦にて、プライマリーケア診療。
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