医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例乳がんMRI検査でAI異常検出モデルが高精度を実現

乳がんMRI検査でAI異常検出モデルが高精度を実現

米ワシントン大学医学部などの研究チームが、乳房MRI検査におけるがん検出のための説明可能なAI異常検出モデルを開発し、従来の二値分類モデルを上回る性能を示したことをRadiologyに発表した。このモデルは、がん有病率の高い集団と低い集団の両方で優れた検出能力を発揮し、腫瘍の位置を正確に特定できる説明性も備えている。

研究では9,738件の乳房MRI検査データを用いて完全畳み込みデータ記述(FCDD)異常検出モデルを開発した。このモデルは正常な乳房組織の特徴を学習し、異常な領域を特定する仕組みである。がん有病率20.0%のデータセットでは、FCDDモデルの受信者動作特性曲線下面積(AUC)は0.84±0.01で、従来の二値交差エントロピー(BCE)モデルの0.81±0.01を有意に上回った(p<0.001)。より現実的ながん有病率1.85%の不均衡データセットでも、FCDDは0.72±0.03のAUCを達成し、BCEの0.69±0.03を上回った。97%の感度を固定した場合、FCDDの特異度は13%でBCEの9%より高く、偽陽性を平均25%削減した。説明性の評価では、FCDDが生成したヒートマップと放射線科医の注釈との空間的一致度(画素レベルAUC)は0.92±0.10で、BCEの0.81±0.13を大幅に上回った(p<0.001)。外部の多施設データセットでも同様の優れた性能が確認された。

研究チームは「このモデルは乳房MRIスクリーニングにおいて放射線科医の作業負荷を軽減し、読影効率を向上させる可能性がある」とコメントしている。異常ヒートマップにより関心領域を迅速に特定でき、正常スキャンのトリアージにも活用できると期待される。今後はより大規模な病変注釈データセットでの評価や前向き研究による臨床統合の検証が必要とされる。

参照論文:
Cancer Detection in Breast MRI Screening via Explainable AI Anomaly Detection

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