ディープラーニングモデルによる推定脳年齢と実年齢の差である脳年齢ギャップ(BAG)は、脳の老化を予測する有望なバイオマーカーとして注目されている。中国の研究グループは、BAGが大きいほど、認知機能低下、認知症、多発性硬化症、精神疾患、生存率の低下のリスクが高くなること、また禁煙、適度な飲酒、定期的な運動といった生活習慣の改善が、特に高リスク者において脳の老化を有意に抑制することを示し、Nature誌のCommunication Medicineで発表した。
研究者らは、UKバイオバンク、Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)、および Parkinson’s Progression Markers Initiative(PPMI)の3つの大規模コホートに含まれる4万人以上の参加者の頭部MRI画像を解析した。3D Vision Transformerを用いて脳年齢を推定し、実年齢との差である脳年齢ギャップ(BAG)を算出したところ、BAGが1年増加するごとにアルツハイマー病リスクは16.5%、軽度認知障害リスクは4.0%、全死亡リスクは12%上昇することが示された。特に、BAGが最も大きいグループでは、アルツハイマー病リスクが2.8倍、多発性硬化症リスクが6.4倍、死亡リスクが2.4倍に上昇していた。また、禁煙、適度な飲酒、定期的な運動といった健康的な生活習慣が、脳の老化を有意に抑制することも明らかとなった。
本研究では、ディープラーニングによる推定脳年齢と実年齢の差であるBAGが、認知機能低下、精神疾患、死亡のリスクの予測可能性を示した。研究者らは、BAGを測定することで様々な疾患リスクの高い個人を早期発見し、脳の健康を維持するための的を絞った生活習慣介入や公衆衛生戦略の策定に役立つ可能性があるとコメントしている。
参照論文:
Brain age gap as a predictive biomarker that links aging, lifestyle, and neuropsychiatric health
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