小児腫瘍患者におけるポイント・オブ・ケアでの迅速な血液検査は、診断や経過観察において非常に重要である。しかし、従来の全血球計算装置(CBC装置)は大型で高コストかつ専門スタッフを必要とし、導入できる施設や迅速性に制約があった。こうした課題を背景に、ブラジルの研究チームは、AIを搭載した携帯型のCBC装置「Hilab Lens」の臨床性能を、標準的に広く使用されている大型CBC装置「Sysmex XE-2100」と比較評価した。
Communications Medicineに発表された論文によると、Hilab Lensの評価にあたり、ブラジル・エラスチーニョ病院でフォローアップを受けている、活動期または寛解期にある2~18歳の血液腫瘍患者555例の全血サンプルが用いられた。Hilab Lensは、光学顕微鏡とスペクトロメトリーを組み合わせ、AI(CNNやトランスフォーマー)が顕微鏡画像を解析して細胞を自動算出した。その結果、Hilab Lensは主要なCBCパラメーターにおいてXE‑2100と同等の測定結果を示し(相関係数r≥0.95)、異常細胞の検出精度も98.8%以上であった。また、静脈採血だけでなく、指先からの微量採血(Capillary blood)でも同様の精度が得られた。さらに、装置価格は従来の10分の1以下であり、リソースの限られた地域への導入も容易である。
研究者らは「Hilab Lensは、小児腫瘍科の診察室やベッドサイドにおいて、迅速かつ正確な血液評価を実現できる」と述べている。今後は、資源の限られた環境など、より幅広い臨床現場での応用や、専門外の医療スタッフによる操作のしやすさ向上に向けた検証が望まれる。
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