Affect.AI – うつ病患者の音声変化を追跡する機械学習ツール

うつ病の外来管理における課題として、病勢を長期的に監視する手段の乏しさがある。何らかの理由で診察間隔にばらつきがあると、患者の記憶が曖昧となり、正確な疾病エピソードの把握はより困難となる。また、1人の患者を複数の医師で診察している場合にも、その変化をモニターし、共有することは容易ではない。

英国 Harley Street Medical Areaにあるメンタルヘルス専門クリニック「Green Door Clinic」は、患者の声の変化を追跡する機械学習ツール「Affect.AI」を導入し、うつ病の症状変化を捉えるために活用しようとしている。うつ病患者の声のピッチや音量などがバイオマーカーとなって症状の重さを検出できることが、各種の先行研究で明らかになってきた。Affect.AIは独自のアルゴリズムによって「人間が捉えにくいトーンの違い」を検出し、ベースラインとの比較によって長期的な病状の追跡を可能にする。

Affect.AIはインペリアル・カレッジ・ロンドンで2019年当時医学生であったWoochan Hwang氏らによって設立されたベンチャーである。チームはアクセラレータプログラムMedTech SuperConnectorのハッカソンをきっかけに結成された。Green Door Clinicは英国で最も早期にAffect.AIを導入したクリニックとしてプロジェクトを支援している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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