パーキンソン病(PD: Parkinson’s Disease)は、震戦・硬直など運動障害を主症状とする中枢神経変性疾患の代表格である。その診断には、発現症状に基づく各種評価尺度が用いられるに留まっており、血液や脳脊髄液などの生体試料から診断するバイオマーカーはいずれも研究段階で確立していない。「PD患者の皮脂に含まれる揮発性有機化合物(VOC: volatile organic compounds)が健常者と異なる匂いを持つ可能性」が先行研究で示され、PD診断手法にユニークなアイディアをもたらしている。
中国・浙江大学の研究チームは、患者の皮脂サンプルから放出されるVOCに対して、ガスクロマトグラフィと表面弾性波センサーを組み合わせたAI嗅覚システム(AIO: artificial intelligent olfactory)で解析し、PD患者を判別する研究を行っている。ACS Omega誌に収載された同システムに関する研究成果によると、PD患者31名と健常者32名の臨床データに基づき、皮脂からのVOCを解析する機械学習モデルをトレーニングした。結果、3種の匂い成分(オクタナール・酢酸ヘキシル・ペリルアルデヒド)でPD患者を有意に識別し、感度91.7%および精度70.8%というモデルパフォーマンスを示していた。
「AI嗅覚(AIO)」および「電子の鼻(e-nose)」については、潜在的な血中バイオマーカーと比べて精度が落ちる可能性があるものの、「非侵襲的」という大きな利点が多くの研究者を惹きつけている。
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