世界規模での高齢化の進展は、認知機能障害の拡大を介して限りある医療資源への負担を増している。専門医不在下でも機能する、一定の自動診断プロセスを構築することへの期待が大きい。米ボストン大学医学部(BUSM)のグループは、患者の多角的な臨床データから認知症を評価するAI研究を行っている。
Nature Communicationsに掲載された同研究の成果によると、認知症が疑われる患者の病歴、各種ルーチン検査、神経心理学的検査、画像検査、などの多様な臨床データを柔軟に受け入れる深層学習フレームワークを開発した。このフレームワークは、正常認知機能/軽度認知障害/アルツハイマー病/非アルツハイマー型認知症を識別し、「その精度は神経科医および神経放射線科医の診断精度とほぼ同等」との検証結果を示している。
研究責任者でBUSMのVijaya B. Kolachalama博士は「典型的なAIモデルは『病気か、病気ではないか』という単純な選択を可能としてきたが、これは医師が診断を行う実際の手法とは異なる。医師は、種々の検査情報から可能性のある様々な疾患を考慮し、診断を決定する。今回の研究は、実世界の診断シナリオに近いもので、多様な神経疾患において正確な診断を行う戦略を実証した点で斬新だ。また、患者が専門診察に到達できないケースについて、我々の研究はそのギャップを埋める可能性がある」と語った。
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