「細菌の抗菌薬への耐性」を示す尺度には、MIC(Minimum Inhibitory Concentration)という「細菌の増殖を抑制できる抗菌薬の最小濃度」が用いられている。多くの公開データベースには、あらかじめ設定されたMICの閾値と、そこから算出された耐性菌の頻度が集計されているが、データ活用が不十分との指摘がある。
スペインのマドリード・カルロス3世大学(UC3M)では、薬剤耐性に関する生データを含むデータベース「ATLAS」から、機械学習手法を用いて「細菌の耐性獲得パターン」を抽出する研究を行っている。ATLASは製薬大手ファイザー社が管理し、2018年から公開している。Nature Communicationsに掲載された研究成果は、UC3Mを中心とした研究グループにより、ATLASの70か国以上・60万人以上の患者における耐性データを解析したもの。その結果、多くの細菌と抗菌薬のペアにおいて、既存データベースよりも耐性頻度が高い状況を確認するとともに、集計データを使用した場合には検出できない耐性獲得パターンが存在することを発見した。
著者でUC3M数学科のPablo Catalán氏は「本研究で独自に検出できる例として、設定された耐性閾値を下回っているものの、MICが時間とともに一貫して上昇している病原体などが挙がる。そのような病原体については、既存の集計データでは耐性の頻度が一定に見えてしまうため、何も指摘できない。生のMICデータを用いることで、このようなケースを検出し、耐性菌出現を警戒できるようになる」と述べている。
関連記事: