米国国立歯科頭蓋顔面研究所(NIDCR)などを中心とする国際研究チームは、「音によって痛みが軽減される神経機構」をマウスにおいて明らかにした。非薬物の新たな疼痛治療法の開発に結びつく可能性があり、大きな注目を集めている。研究成果はこのほど、Scienceから公開された。
チームの研究論文では、前足に炎症を起こしたマウスに対し、「心地よいクラシック音楽」「同曲の不快なアレンジ曲」「ホワイトノイズ」という3種類の音に曝露させ、その反応を調査している。結果、これら3種類の音は全て、囁き声程度の低い強度で流した場合、マウスの疼痛感受性を有意に低下させることを明らかにした。音のカテゴリーに左右されることなく、特定の音強度によって疼痛緩和を誘導できる一方、同じ音をより強く鳴らしても反応変化は観察されなかった。研究論文では、この背景にある潜在的な神経学的機序までを特定しており、同種の脳内プロセスが人間にも存在する場合、疼痛治療が根本的に変革される可能性を持つことになる。
マウスによる検証段階である一方、本研究知見が示すインパクトは多大で、音楽療法を始めとする「音ベースの代替療法」の可能性を押し広げている。以前に紹介したカナダ・LUCID社は、「楽曲の音楽的特徴からメンタルヘルスの改善」を狙うAIツール開発を手がけているが(過去記事参照)、「疼痛緩和を主題とした音楽療法ツール開発」もまた検討の余地があるテーマとなるかもしれない。
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