中耳炎は、米国では「3歳までに6人中5人が少なくとも1回」は罹患する小児頻発の感染症である。その診断精度は一般的な臨床医で70%程度であるにも関わらず、ほとんどの場合で「感染疑い」に抗菌薬が処方され、過剰投与が耐性菌出現の一因となっている。米ハーバード大学医学部の教育病院でもあるMass Eye and Earのチームは「鼓膜画像から臨床医を上回る精度で中耳炎を診断するAIモデル」を開発し、診断精度の向上と安定化に取り組んでいる。
Otolaryngology-Head and Neck Surgeryに発表された同研究では、反復性中耳炎または滲出性中耳炎に対して鼓膜切開とチューブ留置が行われることになった小児の鼓膜画像639枚からモデルトレーニングを行った。その結果、構築されたモデルは80.8%の識別精度を達成している。さらに、39名の臨床医(耳鼻科医・小児科医・プライマリケア医)とともに、それぞれ22枚の鼓膜画像を診断する検証試験においては、臨床医の平均診断精度65.0%に対して、同AIモデルは精度95.5%を達成した。
筆頭著者であるMatthew Crowson氏は「耳の感染症は小児によくあるものだが、しばしば診断の誤りから、治療の遅れや不要な抗菌薬処方につながっている。臨床医は慎重な立場を取りたいもので、診療所を出る親の多くが抗菌薬の処方箋を持って帰る状況もよく理解できる。我々の開発したモデルは臨床医の判断に取って代わるものではないが、彼らの専門知識を補い、より自信を持って治療の意思決定ができるよう助けられる種のものだ」と語った。
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