世界保健機関(WHO)の予測によると、高齢化を背景として、2050年までに世界で4人に1人が聴覚障害を持つとしており、そのうち7億人が「適切なリハビリを必要とする」という。カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)の耳鼻咽喉科、生体医工学、認知科学などで教授を務めるFan-Gang Zeng氏は、事態解決の鍵は「AIとスマートフォン」にあるとみている。
同氏の研究チームは昨秋、Nature Machine Intelligence誌から公開したperspective論文のなかで、「AI研究者と聴覚研究者が協力し、聴覚に技術的な革新をもたらすこと」を呼びかけた。ここでは、既存の技術を応用することで臨床現場に影響を与え得るものを詳説し、「真の人工聴覚システムを構築するための新しい技術開発の方向性」を提案している。UCIがこのほど明らかにしたところによると、Zeng氏は「AIによる診断や最適な治療法選択は速やかに現実になる」と話す。
また、これら技術の恩恵を享受するにはソフトウェアと同時にハードウェアが必要となるが、「幸運なことにスマートフォンが普及した」と指摘し、医療過疎地域を含め、世界中のあらゆる国・地域にこのデバイスが浸透したことは、「先端ケアアクセスへの障壁のほとんどを無くす」と語り、次世代聴覚ケアへの期待感を強調している。