医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究歩数カウントで「がん治療患者の予定外入院」を予測

歩数カウントで「がん治療患者の予定外入院」を予測

放射線療法を受ける患者の10-20%は、がん治療中に救急外来受診や入院といった予定外の急性期医療を要する。この種の高リスク患者に対し、ウェアラブルデバイスの「歩数カウント」でモニタリングすることにより予定外の入院を予測する研究が、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のチームで行われている。

米国放射線腫瘍学会(ASTRO)の2022年次総会で発表された同研究では、化学放射線療法中の患者に対して市販のフィットネストラッカーを装着し、患者属性と治療内容に歩行データを統合することで、「過去2週間の歩行から次の1週間以内の入院イベント発生を予測するモデル」を構築した。結果、歩行データを統合したモデルの予測性能はAUC 0.81と、歩行データなしモデルのAUC 0.57を有意に上回った。予測に寄与する変数の上位5つは、過去2日間の歩数、過去2週間の最小歩数の絶対差、過去2週間の最大歩数の相対的減少、過去2週間の歩数幅(値の範囲)の相対的減少であった。

著者でUCSFのJulian Hong氏は「本研究では直近の歩数が、臨床変数よりも高い予測性能を示す結果となった。毎日変化するという歩数の動的性質は、患者の健康状態の特に優れた指標となる」と語った

関連記事:

  1. メタアナリシス – アクティビティトラッカーの有効性
  2. Zimmer Biomet社「WalkAI」 – 術後の歩行機能回復を予測するAIモデル
  3. 「下肢切断患者の転倒リスク」をスマートフォンで自動分類
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事