免疫性の炎症による筋障害から筋力低下などの症状を来す「免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)」という、慢性ミオパチーの一種がある。IMNMは数ある炎症性筋疾患の中でも筋障害の程度が重く、心筋障害による心不全の合併率が高い。イスラエル・ランバム病院と、米・メイヨークリニックとの共同研究では、IMNM患者の心不全リスクを心電図から予測するAIを検証している。
Mayo Clinic Proceedings: Innovations, Quality & Outcomesに掲載された同研究では、2000-2020年の過去20年間でIMNMの診断を受けた患者89名の心電図データに対して、左室機能不全(LVD)発症リスクの高い患者を特定する機械学習アルゴリズムを適用し、LVD検出感度80.0%を達成した。対象患者89名は当初、明らかな心肺の症状がなく、心エコー検査では正常と判定されていたが、そのうち16例(18%)で標準検査手法よりも早期発見が可能となっていた。また、予測モデルでハイリスクと判定された患者の死亡リスクは、その他の患者よりも7倍高いことが示されている。
IMNM患者には積極的な治療として免疫療法が行われるが、どの患者にどの程度早期から治療開始すべきかの判断は容易ではなかった。また、心機能評価目的のエコー検査は専門リソースが必要となり、頻回に行うことは時間とコストの点で難しく、より利用しやすい心電図検査によってリスク評価できれば大きな利点となる。研究チームはAIモデルの利用により、病状悪化前の早期に適切な治療を開始できる可能性を指摘する。
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