凍結切片の画像変換AIで診断精度向上

手術で腫瘍を摘出する際、切除病変の病理診断次第でその場の手術方針を決定する「術中迅速病理診断」という手法がある。術中迅速病理診断にはスピードが求められるため、組織を急速凍結して病理標本を切り出す「凍結切片」が用いられる。しかし、平常時に12-48時間かけて作成される高品質な「ホルマリン固定パラフィン包埋標本(FFPE)」と比べ、凍結切片では観察を妨げる人工的なノイズ構造(アーチファクト)が発生しやすく、診断精度への懸念となる。米ブリガムアンドウィメンズ病院の研究チームは「凍結切片画像をFFPE標本の様式に変換するAI手法」を開発し、診断精度向上を狙う。

Nature Biomedical Engineeringに掲載された同研究では、凍結切片をFFPE標本の様式に数分以内で変換するディープラーニングモデルを、敵対的生成ネットワーク(GAN)を用いて構築した。脳腫瘍の一種である神経膠腫(グリオーマ)および、非小細胞肺がんの凍結切片画像をFFPE様式に変換したところ、病理医の腫瘍分類の精度向上がみられることを確認している。

著者のFaisal Mahmood博士は「我々はAIによって、時間的制約のある迅速診断を、病理医にとってより容易で身近なものとする可能性を示した。この手法は、あらゆる種類のがん手術に適用できるかもしれない。これは診断と患者ケアの改善に多くの可能性を開くものだ」と語っている

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