病理学におけるAI/機械学習の展望

病理学におけるAIは黎明期にあり、米食品医薬品局(FDA)から承認されたAIデバイスは、血液・体液中の細胞の分類や、子宮頚部組織のスクリーニングなど一部に限られている。今後の可能性を感じる研究室レベルの発表には、肺がん・脳腫瘍・乳がん・前立腺がん・膀胱がんといった各がん種の分類と悪性度判定、さらには予後予測や再発予測といった内容がある。

バージニア大学医療センター(UVA Health)のニュースリリースでは、同施設の専門チームによって発表された「病理学でのAI/機械学習」に関する概説論文を紹介している。米国病理学会のジャーナル Archives of Pathology & Laboratory Medicineに掲載された同論文では、出版済みの病理学AI研究を網羅的にレビューし、将来的な可能性・潜在的な障害を考察し、AIを病理学分野で最大限に活用するための提言を行っている。

同論文の著者らは、人間の医師の判断力や知識をAIが代替するのではなく、補完して強化する「拡張知能(augmented intelligence)」という表現で同分野の目標を設定し、同様の見解を示した米国医師会の声明に賛同している。UVA Healthの臨床検査情報学のディレクターであるJames H. Harrison Jr.氏は「病理医は近い将来、AIシステムの選択・検証・展開・使用・監視を行っていく必要があり、それらシステムの長所と短所、および効果的な管理の技術を学ぶ必要があります。いつAIに頼るべきか、いつAIを疑うべきか、AIをうまく機能させ続けるにはどうすればよいか実践的な理解が必要になるでしょう」と語る。

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TOKYO analytica
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The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。

1. M.Okamoto MD, MPH, MSc, PhD
信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、ロンドン大学ユニバーシティカレッジ(University College London)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員を経て、SBI大学院大学客員准教授、東京大学特任研究員など。専門はメディカルデータサイエンス。

2. T.Sugino MD
防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。