COVID-19の重症患者が死に至る機序として、多臓器不全を引き起こす全身性の強い炎症、いわゆる「サイトカインストーム説(cytokine storm theory)」が仮説の1つにある。しかし、米ノースウェスタン大学の研究チームは、電子カルテデータに機械学習を適用することで、「COVID-19患者の主要な死因には二次性の細菌性肺炎が多いことを示し、サイトカインストーム仮説を否定できる可能性がある」とする研究成果を発表している。
Journal of Clinical Investigationに掲載された同研究では、ノースウェスタン記念病院の集中治療室で重度の肺炎と呼吸不全を起こした585名(うちCOVID-19患者190名)の電子カルテデータから、延べ入院日数の類似した患者をグループ化して解析する「CarpeDiem」という機械学習アプローチを開発した。この結果、「COVID-19患者の約半数が人工呼吸器関連の二次性細菌性肺炎(VAP)を発症し、VAPから回復した患者は生存率が高く、VAPから回復できなかった患者は死亡率が高いため、ウイルスそのものに関連する死亡率は比較的低い」ことが示されたという。研究グループでは、これらの結果がサイトカインストーム仮説の否定を示唆すると考察している。
著者のBenjamin Singer氏は「もしサイトカインストームがCOVID-19患者の長期入院の根底にあるのであれば、多臓器不全への移行が頻繁にみられるはずだが、我々が本研究から見い出した結果は異なるものだった」と説明する。また、共著者のRichard Wunderink氏は「COVID-19患者の死因における細菌性肺炎の重要性は過小評価されており、多くの施設では十分に調べていなかったり、治療の成否ではなく、肺炎の有無に伴う結果のみを見ている」と語った。
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