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COVID-19による死亡リスクに関連する免疫細胞

イェール大学の研究者らは、新しいデータ解析ツールを利用し、COVID-19による死亡リスクに関連する「特定の免疫細胞」を明らかにした。研究成果はこのほど、Nature Biotechnologyから公表されている。

T細胞や抗体産生B細胞などの免疫系細胞は、COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2といった病原体から、生体を幅広く保護することが知られている。また、これまでの大規模なデータ解析により、このウイルスに対する免疫反応について、科学者たちは広範な概観を得ることができた。しかし、通常は防御的な細胞種を含み、一部の免疫細胞が時として深刻な炎症や死を誘発することも明らかとなっている。チームの研究論文によると、イェール大学で開発された機械学習ツール「Multiscale PHATE」は、数百万個の細胞から単一細胞まで、あらゆる解像度のデータを数分以内に解析することを可能とする。この技術は、遺伝学およびコンピューターサイエンスを専門とするSmita Krishnaswamy准教授の研究室で構築された「PHATE」と呼ばれるアルゴリズムを基盤とし、既存のデータ可視化ツールが持つ欠点の多くを克服している。

チームはこの新しい機械学習ツールを用い、COVID-19の重症例でイェールニューヘブン病院に入院した163人の患者から採取した5500万の血球を分析した。その結果、T細胞が多いと予後が悪く、顆粒球と単球という2種の白血球が多いと死亡率が高いことを明らかにした。また、詳細な解析においては、ヘルパーT細胞であるTH17も免疫系細胞であるIL-17やIFNGとともに、死亡率上昇に関連することが示されている。研究者らは、血液中のこれら細胞量を測定することで、患者の生死を83%という高い精度で予測できたことを強調している。

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