医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例最新医療AI研究COVID-19患者の病状悪化を予測する「シンプルな機械学習モデル」

COVID-19患者の病状悪化を予測する「シンプルな機械学習モデル」

ミシガン大学などの研究チームは、電子カルテデータからCOVID-19患者の病状悪化を予測する機械学習モデルを構築し、その性能を多施設で検証した。特徴となるのは、コード共有を前提としたモデル開発で、汎化性能を高めるため、よりシンプルなモデルの構築を行なっていることとなる。研究成果は、権威ある医学専門誌「BMJ」からこのほど公開された。

チームの研究論文によると、機械学習モデルは米国内の単一医療機関におけるデータからトレーニングされ、外部検証を12の医療機関で実施した。開発コホートデータに基づき、線形モデルのアンサンブルをトレーニングし、入院後5日間における臨床的悪化(院内死亡・人工呼吸・高流量鼻カニュラ・バソプレッサーの複合アウトカム)を予測させた。臨床的に利用可能な2,686の変数から選択した9つの変数がモデルに利用されている。内部検証においてAUROC 0.80、期待キャリブレーション誤差 0.01を達成したが、この性能は外部検証においても一貫しており、性別や年齢、人種、民族ごとのサブグループ間での検証でもそのパフォーマンスを低下させることはなかった。

研究チームは「このモデルを用いて低リスク患者をトリアージすることで、早期退院によって患者1人当たり最大7.8日の病床日数を短縮できる可能性がある」ことを強調する。医療資源の最適化に資する現実的なツールとしての価値を示しており、今後の検証拡大と臨床活用が期待されている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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