遺伝性網膜疾患(IRD: Inherited retinal diseases)は遺伝子の異常が引き金となり網膜の変性や機能低下を起こす疾患群を指す。その原因となる遺伝子は多岐にわたり、これらの疾患の診断は容易ではない。英国のユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームが開発した、AIを活用した網膜スキャンシステム「Eye2Gene」は、IRDの診断を一般化し、効率的に進める方向性を示している。
2023年のESHG(欧州人類遺伝学会)年次総会で発表された研究成果によると、Eye2Geneは過去30年以上に渡って蓄積された4,000人以上のIRD患者から得られた遺伝情報と網膜画像データを利用してAIシステムを構築しており、網膜スキャンからIRDの遺伝的原因を直接特定することを可能にした。その検証結果から、同システムは75%以上の症例において、従来の遺伝子表現型に基づく専門スコアと同等かそれ以上の特定能力を有することが示されている。
研究チームでは将来的に「Eye2Gene」を標準的な網膜検査へ組み込み、専門病院でセカンドオピニオンを求める際の補助として、または専門家不在の場合にも利用できるようにすることを目指している。研究を主導するNikolas Pontikos氏は「AIが専門医レベルの診療をさらにアクセスしやすく、公平に提供することで、患者やその家族の役に立つことを期待する」と語った。
関連記事: